古墳探訪　東三河の前方後円（方）墳集成

　豊川左岸の河口付近、築造当時は三河湾最奥部の渥美湾に張り出した半島状の場所に築かれていた古墳です。
　古墳は、「三ツ山児童公園」内にあります。数年前までは、墳丘上には木が茂り、後円部には石碑が建立されていました。また、前方部のくびれ部西側にはコンクリート製の滑り台が設置されていました。現在は、墳丘復元工事が進められ築造当時の姿を目にすることができます。数ヵ月前には、墳丘上に重機が見え、古墳が破壊されると思ってしまいましたが杞憂でした。
　
　岩原剛さんは、「２３９　三ツ山古墳」（『愛知県史　資料編３　考古３古墳』所収）の中で、「前方後円墳で、検出された周溝の位置から平面形は前方部の幅が後円部の径を上回る形態と判明した。規模は全長約３７．０ｍ、後円部径約１８．５ｍ、前方部長約１８．５ｍ・幅約２８．０ｍ、くびれ部の幅約１３．０ｍ、墳丘の高さは現状で後円部が約３．５ｍ、前方部が約２．８ｍである。（中略）墳丘上に葺石は認められないが、埴輪列を伴うテラス面が前方部で確認されたことから２段築成と想定される。」（p．690）と述べています。
　ただし、２０２２年１２月２５日に配布された「三ツ山古墳　発掘調査現地説明会資料」（豊橋市文化財センター主催）には、「三ツ山古墳の概要　形：前方後円墳　規模：全長３８ｍ　築造時期：６世紀始め（古墳時代後期・現在から約１，５００年前）　立地：三河湾に突き出した小規模な半島の先端（古墳のすぐそばまで海が迫っていた）」と記されていました。そのため、タイトルでは、「３７ｍ→３８ｍ」としました。

　この古墳からは、後円部と前方部に横穴式石室が確認されています。特に前方部の石室は、「追葬をせずに、一度限りの使用　被葬者を追葬→入口に石を積んで、土を盛る→入口を完全に塞ぐ　初期の横穴式石室の特徴であり、朝鮮半島から伝えられた当時の形を留めている　東三河では最も古い横穴式石室」と上記の「発掘調査現地説明会資料」に記されていました。また、以前の調査で、前方部の石室からは、大刀・短刀・轡（馬具）などの副葬品が発見され、円筒埴輪・人物埴輪片が出土しているそうです。おっさん的には、足指が残された力士と思われる人物埴輪片に興味があります。　

　三ツ山古墳の約１．５ｋｍ南西に、古墳時代前期初頭に築造された市杵嶋神社古墳が位置しています。渥美湾岸では、後期初頭に築かれたこの三ツ山古墳までは目立った古墳の築造はありませんでした。　　


　後円部中央。右側。左側。
　前方部右側。左側。

　前方部から後円部。前方部右隅から後円部。前方部左隅から後円部。
　後円部墳頂。

　ほぼ全景（横から）。右が前方部、左が後円部。　　　　　　　　以上2024年1月撮影。

　ほぼ全景（横から）。右が前方部、左が後円部。
　全景。　　　　　　　　以上2023年11月撮影。

　　　　現地説明会
　前方部の横穴式石室。南西から。
　前方部の横穴式石室。上から。
　後円部の横穴式石室のパネル。
　出土品。　　　　　　　　以上2022年12月25日撮影。

　後円部中央。右側。左側。
　前方部右側。左側。

　前方部から後円部。前方部右隅から後円部。

　後円部墳頂。　　　　　　　　以上2019年12月撮影。


　　姉妹ブログ「古墳探訪　大型古墳集成」の２０２３年１月１日のブログ「番外　三ツ山古墳」で、２０２２年１２月の現地説明会、同１０月・２月に撮影した絵を掲載しています。